働きながら子育てを頑張る皆さんにおススメする本 その24
今回は特に育児のモヤモヤにお困りの方におススメしたいです。
『母ではなくて、親になる』山崎ナオコーラ 河出書房新書 2017年
所謂、著名人が我が子を通して、育児のことを綴ったエッセイ本は世の中にけっこうあると思うので、人によって「この人の話は自分に合う」とか「自分にはキラキラな世界過ぎてあまり共感できない」とか、本の種類の中でもシビアに「合う、合わない」問題が出てくるジャンルではないでしょうか?
今回の作者・山崎さんはけっこうそういったことを理解しつつ、でも「自分の思っていることはストレートに書くよ!」とさらけ出している感じがして私は面白く読めました。
帝王切開のこと、ベビーカー使用のこと、オーガニックのこと・・・などなど
ついつい熱い論争になりつつも、けっこう不毛な展開になりがちな話題に対しても、自分の考えをストレートに書かれています。
それが私の考えとは違っていても別に不快に思ったりしないのが、この方の文章のうまさというか、性格というか・・・
そういったところもあるのでしょうが、素直に「ああそうだよなあ」と思ったのは
自分が◯◯だと思うのはなぜか?
ということを突き詰めて山崎さんは考えて書いているからだと思いました。
「いやいやエッセイだし、それはそうでしょう」と思われるかもしれませんが、そういった大事な部分をすっ飛ばして「世の中こうだからこうですよね〜」「今の時代のママはこういうものですよね〜」と自分ではない世の中目線からの話でスタートして、間にちょっとだけ自分の意見が入って、でも結局、世の中目線のままゴールして終わってしまうような軽いエッセイ記事がネットで散件している昨今
世の中(の雰囲気)はこう書いているけれど、自分は◯◯だと思う。
なぜなら◯◯だから。
と、山崎さんの考えを通して、自分の思考を整理、振り返ることができたので、気持ちの良い読書時間でした。
特に良かったのが「同じ経験をしていない人とも(山崎さんは)しゃべりたい」という話。
山崎さん曰く、
『「似た経験をした同士で、わかり合おうとするのが会話だ」と思い込んでいたら、外国の人と話すことなんてできない』
『「親」か「親でない」か、と分けてコミュニケーションを取ろうとするとこぼれ落ちてしまうことがたくさんあって、とてももったいない』
・妊娠したことがある
・流産したことがある
・育児経験がある
なぜかこういった話題は、経験者同士でないと話題にしてはいけない風潮があるように私も思っていたのですが、そうなると子どもがいない夫婦とか、流産経験がないママとか、そもそも独身の人とかは、そういった話題をしていけないのか?という話になるなあ、と。
当事者が「つらい」とか「悲しい」とか「経験者としか話たくない」とか、そもそも話をしたくない場合は、相手が経験者であろうとなかろうと語り合う必要はないと思うのですが、別に当事者側が相手の経験の有無に関係なくしゃべりたくて、相手もしゃべりたいのであればしゃべりあっていいと私も思っています。
だって世界はそういった区分けで成り立つものではないし、むしろそれは互いに生きづらい世の中にしているだけだと思うからです。
独身、専業主婦(夫)、離婚者、再婚者、子なし、子持ち、シングルマザー(ファザー)、障がい者、外国人、若者、高齢者・・・
なんだかこういったワードが差別ワードみたいになっていて、互いに窮屈な思いをしている気がして、言葉が大変雑ですが「ムカッ」とします(笑)。
(そう考えると前々回紹介した「子ども食堂」のような地域住民に根ざした活動、場所の存在はやはり大切ではないかと思いました)
世の中の根拠のない雰囲気に回りに流されないためにはどうしたらいいか、ちょっとネット記事やテレビなどの見すぎてお疲れ気味の方は、ぜひ肩肘張らずに読んでみてはいかがでしょうか?
そして、山崎さんが「母ではなくて、親になる」というタイトルにした意味を考えてみてください。